令和5年度 森林組合経営力向上事業
令和2年度に始まった当事業では、地域の中核的な林業の担い手である森林組合の自立的経営に向けて経営基盤の強化を図るとともに、効率的で持続的な林業経営の実現を推進することを目的とした、人材育成や業務効率化などをテーマに経営力向上に資する研修を長野県の助成を受け、当会で行っています。
昨年11月2日に安曇野市三郷のもくりゅう館で開催した第1回目は、県内森林組合から18名が参加し、㈱エルライフコンサルティングの社会保険労務士 橋詰岳幸氏を講師に「経営者・幹部に必要な労務知識」と題して、グループワークを交え研修しました。
労働時間管理や休日管理の問題、ハラスメントやメンタルヘルス・業務上災害の問題について、日頃の業務で起こりがちなケーススタディを題材に法制度やその考え方について社会保険労務士の観点から解説いただき、人材確保を課題とするなかで、働きやすい職場づくりは不可欠であることを再認識しました。
1月12日に開催された第2回目は、県内の森林組合から22名が参加し、税理士法人田中事務所の税理士・MBC(経営学修士)田中義晴氏を講師に、「財務力を強化して自社経営を考える」と題して、税務判断に必要なスキルや、財務分析の基礎実務、資金を戦略的に運用する考え方について研修しました。
税理士としての活動だけでなく、飲食業や小売業など幅広く自ら経営に携わっていることもあり、豊富な経験から軽妙に語られる税務や財務の講話は、ポイントを押さえてわかりやすく解きほぐしてくれる内容でした。
一口に森林組合といっても、高性能林業機械や施設の保有数や業務のあり方も多様であり、その組合の状況や市場環境に合わせた戦略が必要です。
また、経営者として決算期だけでなく、1人あたりや時間あたりなどの原単位で現場を分析することが重要と講演では述べられ、グループに分かれてのディスカッションでは当事者目線の真剣な議論がありました。
また、2月22日にはいざなみ技研工業社の代表 大岡明氏を講師に「中堅職員研修会」を開催し、県内の森林組合から22名が参加しました。
林野庁森林技術総合研修所や三重県みえ林業アカデミーで講師も務める同氏が、製造業での生産管理の改善にアドバイザーとして携わってきた観点から、林業での高い労働災害発生率による生産性低下の問題について講演いただきました。
チェーンソー伐倒やハーベスタ、フォワーダーでの作業を動画撮影し、秒単位での分析から改善提案を行った長野森林組合での例や、信州大学と共同で行った森林内路網配置や高性能林業機械を利用した作業システムに関する研究などが紹介され、生産性の向上にあたって「安全管理」が前提であることや、人間工学に根ざし無駄や負担が生じる作業を減らす取り組みが重要であることが話されました。
令和3年の森林組合法改正では実践的能力を有する理事の就任が追加され、森林組合のより一層の経営力強化が求められています。
今後も情報提供や研修会の開催に努めてまいります。